アクティブボード・2013年 3月
     ・・・・・2013年 3月 2日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第35回日本分子生物学会年会
 2012年12月11日〜14日(福岡)

タイトル;MCAF1/SETDB1リジンメチル化酵素複合体の細胞老化における役割.

発表者;笹井 信広 氏
   (熊本大学 発生医学研究所 細胞医学分野)
Abstract;
 MCAF1(MBD1-containing chromatin associated factor 1)はリジンメチル化酵素SETDB1と安定的な複合体を形成し、SETDB1の酵素活性を調節するコファクターである。MCAF1はATF7やMBD1といったDNA結合因子や基本転写因子、RNA pol IIなどと相互作用し特定の遺伝子の発現制御を行っていると考えられるが、その標的遺伝子についてはほとんど明らかとなっていない。またMCAF1は様々な癌細胞/組織で高発現が認められるものの、その生物学的役割や癌化との直接的な関わりについては不明な点が多い。そこで癌細胞と正常細胞を用いて、MCAF1の機能解析を行っている。MCAF1が高発現するHeLaやMCF7などの癌細胞株では、MCAF1はH3K9me3修飾というその機能から推測される通り、ヘテロクロマチンに局在していた。一方、ヒト正常細胞株であるIMR90やHMECにおいては、MCAF1はヘテロクロマチンではなくPMLボディに局在した。MCAF1をsiRNAによりノックダウンしたIMR90細胞は増殖を停止し、老化細胞に特徴的なヘテロクロマチン構造であるSenescence‐associated heterochromatin foci(SAHF) の形成やSA-β-Gal活性の増加といった老化の表現型を示した。またRasにより老化を誘導すると、老化に伴ってMCAF1のPMLボディへの局在がより顕著になった。老化細胞でSUMOがPMLボディに蓄積することや、MCAF1がSUMO結合モチーフ(SIM)を持っていることを考えると、SUMO化がMCAF1の局在や活性の制御に関係していることが考えられる。これらの結果は、MCAF1が細胞老化の経路において重要な役割を担っていることを示唆している。