アクティブボード・2013年 1月
     ・・・・・2013年 1月 4日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第35回日本分子生物学会年会
 2012年12月11日〜14日(福岡)

タイトル;核内クロマチン相互作用解析により明らかになったマウスES細胞分化過程で制御を受ける染色体ドメインの特殊なクロマチン折りたたみ原理.

発表者;竹林 慎一郎 氏
   (熊本大学 発生医学研究所 細胞医学分野)
Abstract;
 ES細胞分化の過程で、ゲノムの6%におよぶ領域が、400-800 kbという単位でearly to late (EtoL) replication timing switchingとよばれるDNA複製制御を受ける。このようなEtoL染色体ドメインには、ES細胞特異的に発現する遺伝子が見つかっており、分化後これらの遺伝子は、サイレンシングをうけ、リプログラミング因子に対し抵抗性を示すことが分かっている。おそらくEtoL染色体ドメインは、リプログラミング因子がアクセスしにくい特殊なクロマチン構造を形成していると考えられているが、その詳細についてはこれまで不明であった。我々はまず、NMaseや制限酵素に対するクロマチンの感受性をゲノムワイドに調べたところ、EtoL染色体ドメインが、細胞の分化状態や遺伝子発現レベルに関係なく凝縮したクロマチン構造をとっているという予想外の結果を得た。一方で、chromatin conformation capture (4C) 法による解析により、EtoL染色体ドメインは、細胞の分化過程で核内クロマチン相互作用パターンをダイナミックに変化させることが明らかになった。具体的には、ES細胞分化前のEtoL染色体ドメインは、S期初期に複製する核内部のユークロマチン区分と強く相互作用する。これに対し、分化後は、S期後期に複製する核膜周辺のクロマチン区分と相互作用することが分かった。本来凝縮したクロマチン構造をとっているEtoL染色体ドメインが、核内でより高次のレベルで折りたたまれるという極めて特殊な制御を受けることで、安定な遺伝子サイレンシングやリプログラミング因子への抵抗性を示すと推測される。また、このような染色体ドメインレベルでの制御を担う因子についても議論したい。