アクティブボード・2012年11月
     ・・・・・2012年11月 1日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第117回 日本解剖学会総会・全国学術集会
 2012年 3月26日〜28日(山梨)

タイトル;脾臓形成を制御する遺伝子ネットワークの同定とその作用機序.

発表者;勝 賢二郎 氏
   (熊本大学 発生医学研究所 肝臓発生分野)
Abstract;
 脾臓は免疫の場である二次リンパ性器官として知られている。その役割は、免疫防御に加えて、造血・血球の濾過・貯蔵機能も併せ持つユニークな器官である。脾臓の形成は、背側胃間膜において、背側膵臓原基に隣接した領域の間充織が凝集することから始まる。その後、内部に血管網を発達させつつ膵臓間充織と分離し、胃間膜より膨出・独立する。
 我々は脾臓形成の分子メカニズムの解明を目指している。これまでにニワトリ胚(3〜16日胚)の脾臓原基における転写制御因子(Hox11、Pod1、WT1、Barx1、Nkx3.2)の発現パターン解析を行っている。その結果、脾臓原基の中皮(mesothelium)あるいは内部の細胞群により強い発現を示すものがあるなど、それぞれの遺伝子が時間・空間的に異なる制御を受けていることが示唆される結果を得ている。今回我々は、上記の転写因子群に加えてFgf16およびFGF receptor-1、-2が、それぞれ脾臓原基の中皮(mesothelium)と内部の細胞群に発現することを見いだした。これらの結果より、Fgf16からのFGF receptor-1、-2を介したシグナルが、脾臓原基における転写制御因子の発現、さらには脾臓の形態形成の何らかの過程を制御することが仮定できる。以上の結果を基に、脾臓形成に至る遺伝子間相互作用のモデルを提唱する。