アクティブボード・2012年10月
・・・・・2012年10月 4日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・日本実験動物科学・技術 九州 2012
2012年 5月24日〜26日(別府)
タイトル;ヘルパーES細胞を用いることによりキメラ作製困難なES細胞から生殖系列キメラを得る手法の開発.
発表者;荒木 喜美 氏
(熊本大学 生命資源研究・支援センター 疾患モデル分野)
Abstract;
通常、ES細胞からキメラマウスを作製する場合、目的とするES細胞と正常マウス胚、つまり2種類の細胞を混ぜることで、個体発生を可能にすることが出来る。しかしながら、ES細胞の性質によっては、ES細胞の混合割合(キメラ率)の高いキメラ胚において、個体発生が正常に進まず、出生前に死んでしまうことがある(ES細胞A)。他方、キメラ率の高いキメラは生まれるが、精子形成能に異常が有り、マウス系統を樹立できないES細胞も存在する(ES細胞B)。<BR> 今回我々は、ES細胞Bをヘルパー細胞として使用し、ES細胞Aから効率良くマウスラインを樹立する方法を開発したので報告する。<BR> 可変型遺伝子トラップクローンデータベース:EGTC [http://egtc.jp] に登録しているAyu21-16 ES細胞は、得られるキメラマウスが100%キメラである確率が高く、かつ生まれるキメラマウスの匹数も多い。しかし得られたキメラマウスの雄において、交配時までに精巣の萎縮等による精子形成不全が見られ、仔が得にくいという特徴がある。偶然得ることが出来たF1マウスにおいては精子形成異常が観察されず、特に問題なくマウスラインを樹立することが出来たので、トラップした遺伝子(Hspa8)の影響では無い。このAyu21-16 ES細胞のレポーター遺伝子をEGFPに置換したAyu21-16EG4 ES細胞をヘルパー細胞として用いた。<BR> 通常の方法でキメラ率の高いキメラマウスを得ることが出来なかったES細胞株と、Ayu21-EG4 ES細胞株および正常マウス8細胞期胚を凝集させ、キメラマウスを作製した。雄のキメラマウスを正常雌マウスと交配させ、目的とするES細胞由来の精子が受精して仔が得られたかどうか、すなわちキメラマウスにおいて目的とするES細胞が生殖系列に入ったかどうかを検討した。単独のキメラ作製ではラインを樹立できなかった10系統のES細胞株について実験を行い、6系統(60%)において目的とするES細胞由来のF1マウスを得ることが出来た。他のヘルパー細胞株(CTB28)を用いた結果も併せて報告する。