アクティブボード・2012年 9月
     ・・・・・2012年 9月 3日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第14回日本RNA学会年会
 2012年 7月18日〜20日(仙台)

タイトル;選択的にmRNA核外輸送を阻害する化合物の同定と解析.

発表者;糀本 大和 氏
   (熊本大学 大学院自然科学研究科 生命科学専攻 RNA分子生物学研究室)
Abstract;
 真核細胞の遺伝子発現において、DNAより転写されたmRNAの核外輸送は必須の反応となっている。しかしながら、その詳細な機構に関しては未だに解明されていない部分も多い。
 そこで我々は、mRNA核外輸送の制御機構解明を目的として、放線菌培養上清サンプルを用いたmRNA核外輸送阻害化合物の探索を行った。探索では、oligo dT probeを用いた蛍光in situ hybridizationで処理後のHeLa細胞内におけるpoly(A)+mRNAの分布を可視化し、核内にpoly(A)+mRNAが蓄積することをmRNA核外輸送阻害の指標とした。1,574種の放線菌培養上清サンプルをスクリーニングした結果、核内構造体である核スペックルにpoly(A)+RNAを強く集積させ、細胞質のpoly(A)+RNAシグナルを減少させる候補上清1900-57aを得た。蛍光in situ hybridizationによって得られた細胞内のpoly(A)+RNAシグナルの輝度測定と、化合物処理下で転写される新生RNAのRT-PCR解析の結果、候補上清1900-57aがmRNAの核外輸送阻害作用をもつことが示された。候補上清1900-57aを分画した結果、活性化合物としてToyocamycinを同定した。興味深いことに、Toyocamycin処理細胞においては、mRNAの種類によって核外輸送阻害を生じるmRNAと影響を全く受けないmRNAが見られ、選択的なmRNA核外輸送阻害の存在が示唆された。現在、ToyocamycinによるmRNA核外輸送阻害機構について解析を進めている。