アクティブボード・2012年 6月
・・・・・2012年 6月 5日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・日本実験動物科学・技術 九州 2012
2012年 5月24日〜26日(別府)
タイトル;小動物用SPECT/CT FX3300プレクリニカルイメージングシステムの導入.
発表者;後藤 久美子 氏
(熊本大学 生命資源研究・支援センター RI実験分野)
Abstract;
人や動物の生体情報を生きたまま分子・細胞レベルで画像化できれば、疾患のメカニズムや病態の解明あるいは創薬の研究開発などに非常に役に立つ。このような画像化は、最近、分子イメージングとして生命科学分野における基礎研究や臨床研究領域で大きく注目されている。熊本大学生命資源研究・支援センターは、遺伝子改変マウスの開発、保存、供給において国内外で多大な実績をあげているが、さらにヒト遺伝子発現マウスに対して分子イメージングによる表現型解析を行うために、平成23年9月に小動物用SPECT/CTシステムが新規に導入された。そこで本発表では、このシステムの性能評価とその有用性について検討したので報告する。
今回導入された小動物用SPECT/CT装置は、GM-I社製FX3300プレクリニカルイメージングシステムで、放射性トレーサから出るガンマ線イメージング用SPECTと体外照射イメージング用X線CTの2つのモダリティから成る。SPECTは、180°対向する2つの検出部それぞれにCZT半導体検出器(エネルギー分解能4.5%)を有し、コリメータとして、シングルピンホール(直径1 mm、マウス用)、5穴マルチピンホール(直径1 mm、マウス用とラット用)および高分解能パラレルホールコリメータが選択できる。X線CTは、超高分解能用X線管(30 μm)の搭載により、直径90 mm、長さ90 mmの視野を最速1分でコーンビームスキャンが可能である。この装置を用いて、空間分解能測定用ファントムとマウスのTc-99m過テクネチウム酸ナトリウムによるSPECTイメージングを行い、さらにマウスのX線CTを撮像した。
空間分解能ファントムのSPECTイメージよりシングルピンホールの空間分解能は0.6 mm程度で、マルチピンホールでは0.8 mmを識別できた。Tc-99mによるマウスのSPECTイメージでは、甲状腺や膀胱への集積状態が明瞭に描出できた。さらに、X線CTイメージとの重ね合わせ画像では、微細な形態と機能の同時情報の解析が容易になった。
放射線を用いた分子イメージングは、何匹もの実験動物を殺すことなく、非侵襲的かつ経時的に生きたまま一個体の生体情報を画像として観察可能にする。今回導入したSPECT/CT装置は、高精細X線CTによる解剖学的情報と高分解能SPECTによる機能的情報を融合でき、熊本大学における生命科学分野の研究の進展に多大に貢献できるものと期待できる。今後さらに実験動物による実績を積み重ねていきたい。