アクティブボード・2012年 1月
     ・・・・・2012年 1月 4日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第34回 日本分子生物学会年会
 2011年12月13日〜16日(横浜)

タイトル;細胞核形態の定量的解析によるiPS細胞の識別.

発表者;徳永 和明 氏
   (熊本大学 発生医学研究所 細胞医学分野)
Abstract;
 発生、分化/脱分化、各種の疾患において、遺伝子の発現プロファイルとともに、染色体を含めた核内構造がダイナミックに変動する。細胞核の形態は細胞状態を評価する指標として用いられてきた。iPS細胞の安全な医療応用には、これらの細胞を識別・同定する技術の確立が不可欠である。iPS細胞に特徴的な核内因子を定量的に評価するために、ヒトiPS細胞株(201B7)、線維芽細胞(IMR90)、癌細胞(HeLa)に対し、核構造体やクロマチン因子を認識する多数の抗体を用いた免疫染色を行い、イメージサイトメーター(オリンパス社Celaview RS100)による解析を行った。その結果、iPS細胞に特徴的な核内因子として、SP1(転写因子)、Cajalボディー、核ラミン、傍核小体コンパートメント(PNC)、及びPMLボディーを同定した。興味深いことに、一部のiPS細胞では、線状PMLボディーの形成が認められた。これらの5つの因子を指標とすることで、iPS細胞、正常な分化細胞、又は癌化した細胞のいずれであるかを識別可能であることが示唆された。次に、センダイウィルスベクターによるヒトiPS細胞誘導を行った。iPS細胞コロニーと部分的リプログラミング細胞コロニーの細胞に対して、核内因子の免疫染色を行った結果、5つの因子が適切にリプログラミングされたiPS細胞を識別することに有効であることが示された。これらの解析に加え、多目的パターン認識ソフトウエア(wndchrm)を用いたiPS細胞診断を施行している。これらの結果から、細胞診断補助技術への応用の可能性が示唆された。