アクティブボード・2011年11月
     ・・・・・2011年11月 3日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第21回日本臨床精神神経薬理学会 第41回日本神経精神薬理学会 合同年会
 2011年10月27日〜29日(東京)

タイトル;統合失調症患者における肥満及びメタボリックシンドロームに関わる遺伝子多型の検討

発表者;吉森 友紀 氏
   (熊本大学 大学院生命科学研究部 薬物治療学分野)
Abstract;
【目的】統合失調症(SCZ)患者では肥満やメタボリックシンドローム(MetS)が高頻度に認められ、心血管疾患リスクを上昇させる。近年、SCZ患者の肥満やMetSにはセロトニン受容体やレプチン、葉酸代謝等の遺伝因子が関与することが報告されている。一方、肥満やMetS の研究では、酸化ストレスや脂質輸送等に関連する遺伝因子の影響が示唆されている。本研究では、SCZ患者の肥満やMetSとの関係が報告されている遺伝子に加えて、未だSCZ患者では検討されていない肥満やMetS関連遺伝子の影響について検討した。
【方法】本研究に同意が得られたSCZ患者329名(年齢50.7 ± 15.2歳)を対象とした。セロトニン受容体、レプチン、葉酸代謝、脂質輸送、脳由来神経栄養因子及び酸化ストレスに関連する14種の遺伝子多型を判定し、肥満及びMetSに及ぼす影響を、臨床情報(年齢、性別、入院・外来、薬物服用歴等)を加味したロジスティック回帰分析により解析した。
【結果】Glutathione S-transferase (GSTT1)欠損者では非欠損者に比べて、全対象者でのMetSの頻度が約2.2倍高かった(P=0.007)。5-Hydroxytryptamine receptor (HTR) 2C C-759TのC保有者又はホモ野生型は、全対象者でのMetSの頻度が約4.2倍高かった(P=0.025)。また、leptin (LEP) G-2548Aホモ変異型ではMetSの頻度が入院患者においてのみ約3.3倍高かった(P=0.044)。さらに、methylenetetrahydrofolate reductase (MTHFR) C677T変異保有者では非保有者に比べて、肥満の頻度が女性においてのみ約2.1倍高かった(P=0.048)。
【考察】本研究では、抗酸化酵素であるGSTT1の欠損者がSCZ患者でのMetSの危険因子となることを初めて明らかにした。また本研究では、過去の報告と同様にHTR2C、LEP及びMTHFRの遺伝子多型がSCZ患者の肥満やMetSに関与することが確認されたが、このうちLEPとMTHFRについてはその関連性が性別等の患者要因に影響される可能性が示唆された。