アクティブボード・2011年 9月
     ・・・・・2011年 9月 1日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第11回日本蛋白質学会
 2011年6月7日〜9日(大阪)

タイトル;AAAファミリー蛋白質p97のATP依存的な構造変化の解析.

発表者;野井 健太郎 氏
   (熊本大学 発生医学研究所 分子細胞制御分野)
Abstract;
 p97は、様々な種で保存され、多機能性を有しており、ATP加水分解に伴う構造変化により基質蛋白質の脱会合・分解反応を触媒することにより、細胞周期の調節、小胞体関連分解、異常蛋白質の凝集抑制・分解、胚発生、性決定など様々な細胞過程に関与していることが報告されている。また、p97は骨パジェット病と前頭側頭葉型認知症を伴う封入体筋炎(IBMPFD)および筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因因子として同定され、ヒトの疾患にも関与することが報告されている。
 本研究では、生理条件下で機能している蛋白質の構造変化を高空間・時間分解能(1画像の取得に要する時間が100ミリ秒以下)で解析できる高速原子力顕微鏡(高速AFM)を用いて、p97の生理的条件下での連続的な構造変化・特定のヌクレオチド状態での構造の安定性や分子毎の差などについて解析を行った。高速AFMによるp97の観察で、結晶構造と類似したホモ6量体のリング構造を確認した。さらに、ATP存在下でp97は時計回りに約30°回転し、0.1~0.2秒後には、反時計回りに30°回転し、元の位置に戻るといった動きを繰り返し行うことを明らかにした。観察されたp97の構造変化が、ATP加水分解によるのか、あるいはATP結合によるのかなどを詳細に解析するために、ATP結合能やATP加水分解能を欠損させたp97変異体を用いた解析を行っている。またp97へのアダプター蛋白質の結合についても解析を行っている。