アクティブボード・2011年 5月
     ・・・・・2011年 5月 4日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第33回日本分子生物学会年会 
 2010年12月7日〜10日(神戸)

タイトル;RNAi機構を介したセントロメアヘテロクロマチン形成への分裂酵母基本転写因子複合体TFIIH構成因子Ptr8pの関与.
 
発表者;水谷 文哉 氏
   (熊本大学 大学院自然科学研究科 RNA分子生物学研究室)

Abstract;
 分裂酵母のptr8-1変異株は非許容温度下でpoly (A)+ RNAの核外輸送が阻害される温度感受性mRNA核外輸送変異株の一つとして単離された。ptr8+遺伝子は基本転写因子複合体TFIIHの構成因子であるヒトXPBのホモログをコードしており、転写、DNA除去修復、mRNA核外輸送に関与している。
 ptr8-1変異株は微小管重合阻害剤であるTBZに対して高い感受性を示すことから、キネトコアと微小管との結合に異常が生じている可能性が考えられた。そこでセントロメア領域にura4+遺伝子を挿入した株(ptr8-1/ura4+)を作成し、セントロメア領域のヘテロクロマチン化状態を調べた。その結果、ptr8-1/ura4+変異株はUra4pが発現すると致死となる5-FOAに対して感受性を示し、セントロメア領域に挿入したura4+遺伝子のmRNAの発現もRT-PCRにより確認された。さらに、ChIP解析により、ptr8-1変異株においてヘテロクロマチンタンパク質Swi6pのセントロメア領域への結合の減少、セントロメア領域でのヒストンH3K9のジメチル化の減少が生じている事が明らかとなった。これらのことから、ptr8-1変異株ではセントロメア領域のヘテロクロマチン形成が異常であると結論づけた。
 分裂酵母ではセントロメアヘテロクロマチン形成にRNAi機構が関与しており、RNAi関連因子の変異株においては、siRNAにプロセスされる前段階のセントロメア由来non-coding RNAが蓄積する。RT-PCRによって解析したところ、ptr8-1変異株においてもセントロメアnon-coding RNAの蓄積が確認された。以上の結果は、TFIIH構成因子Ptr8pが転写やmRNA核外輸送のみならず、セントロメア領域のヘテロクロマチン形成にも関与していることを示唆している。