アクティブボード・2011年 4月
     ・・・・・2011年 4月 9日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第4回揺らぎと生体機能公開シンポジウム 
 2010年11月30日〜12月1日(滋賀)

タイトル;HIV protease inhibitor inhibits the growth of primary effusion lymphoma and induce apoptosis.
 
発表者; 刈谷 龍昇 氏
   (熊本大学 エイズ学研究センター 岡田プロジェクト研究室)

Abstract;
【目的】Primary Effusion Lymphoma (PEL) は、近年同定された非ホジキンリンパ腫であり、その約80%がHIV感染者に合併する。PELは腹腔などの体腔性に広がる独特の症候を見せ、化学療法抵抗性で、50%生存期間6.2カ月という極めて予後不良の悪性リンパ腫であり、有効な治療法が未だ確立されていない。またPELの発生にはKaposi sarcoma associated herpes virus (KSHV / HHV-8)が関与していること、NF-κB経路が恒常的に活性化していることが知られている。近年、HIV Protease InhibitorにNF-κB経路を阻害する作用があることが報告されている。そこで本研究では3つのHIV Protease Inhibitor, Ritonavir (RTV), Lopinavir (LPV), Darunavir (DRV) のPELに対する抗腫瘍効果を検討した。
【方法】In vitroにてMTT法やFACS解析によりHIV Protease Inhibitor処理による細胞増殖抑制効果とアポトーシス誘導効果を検討した。また、ウェスタンブロット、プロモーターアッセイによりその機序の解析を行った。更に、高度免疫不全マウス(NOJ mice)にPEL細胞株を移植したPEL発症マウスモデルにおける、HIV Protease Inhibitorのin vivoにおける抗腫瘍効果を検討した。
【結果】MTT法によりRTV、LPVに細胞増殖抑制効果が認められた。さらにPropidium iodide による DNA 染色においてRTV, LPVに細胞周期をG1期で止める作用があることが判明した。また、RTV, LPV処理した細胞においてCaspaseの活性化、Annexin V陽性細胞の顕著な増加が認められたことから、アポトーシスが誘導されることが証明された。ウェスタンブロットやプロモーターアッセイから、RTV, LPVがプロテアソーム活性を抑制しNF-κB経路を抑制していることが明らかになった。しかしDRVにはこれら細胞増殖抑制効果、アポトーシス誘導効果、NF-κB経路抑制効果は見られなかった。また、PEL発症マウスモデルにおいてLPVは腹水の貯留を顕著に抑えたが、DRVにはこの効果は観察されなかった。
【結語】PEL細胞株においてRTV, LPVはプロテアソーム活性抑制とそれに伴うNF-κB経路抑制に基づく抗腫瘍効果が確認されたが、DRVにはそれらの効果がなかった。HIV-1感染に合併するPEL及びEBV関連悪性リンパ腫においては、NF-κB経路が活性化していることが知られている。本研究からHIV Protease inhibitor (RTV, LPV) は、抗HIV-1効果と共にNF-κB経路阻害作用があることから、PELをはじめとするエイズ関連悪性リンパ腫の発症予防に有効であることが示唆された。