アクティブボード・2011年 3月
・・・・・2011年 3月 1日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第33回日本分子生物学会年会
2010年12月7日〜10日(神戸)
タイトル;CAMKII によるp27のセリン10番のリン酸化はアポトーシスを制御する.
発表者; 梶原 隆太郎 氏
(熊本大学 保健学教育部 保健学専攻)
Abstract;
セリン・スレオニン脱リン酸化酵素は細胞周期のコントロール・代謝などを調節することが知られている。PP2A,PP4,PP6は共通の構造を持ち1つのサブクラスを形成している。私たちが発見したシグナル伝達分子alpha4はPP2A, PP4, PP6すべての分子と結合しその酵素活性を制御する。alpha4はリンパ球の抗原レセプターシグナル伝達経路に関与しリンパ球の活性化、抗体産生などを調節している。B細胞またはT細胞特異的なalpha4の遺伝子破壊マウスを用いた実験から、alpha4がリンパ球の生存・増殖に必須の分子であることが明らかとなっている。さらにalpha4を神経系で遺伝子破壊すると記憶・学習が障害されることを明らかとしてきた。記憶・学習のシステムではPP2Aが重要なはたらきをし、alpha4とPP2AがCAMKIIと結合し、酵素活性を制御することが示された。PP2Aはほとんどすべての組織で発現しているが、PP6は中枢神経系、心臓、免疫系を中心に発現することが報告されている。そこでalpha4が免疫系、心臓でPP6を介して細胞生存を制御するメカニズムを解析する目的でPP6機能を抑制するDominant-Negative PP6(DN-PP6)を作製した。HeLa細胞にDN-PP6を発現させたトランスフェクタントはTNFとシクロヘキシミドによるアポトーシスの誘導に抵抗性を示した。DN-PP6を発現するトランスフェクタントでは、CAMKIIのリン酸化とp27分子の発現増加がみられた。さらに、p27の安定性に関与するといわれているセリンの10番目をCAMKIIがリン酸化した。このことはPP6とCAMKIIがp27分子を介してアポトーシスを制御することを示す。