アクティブボード・2011年 2月
     ・・・・・2011年 2月 3日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第33回日本分子生物学会年会 
 2010年12月7日〜10日(神戸)

タイトル;CTCFによるTNF/LT遺伝子クラスターの発現調節機構.
 
発表者; 渡邊 丈久 氏
   (熊本大学 発生医学研究所 細胞医学分野、大学院生命科学研究部 消化器内科学分野)

Abstract;
 TNFスーパーファミリーに属するtumor necrosis factor α (TNFα)、 lymphotoxin α (LTα)、 lymphotoxin β (LTβ)は、様々な生命現象に関与する炎症性サイトカインである。炎症応答において、この3者の役割は異なっており、TNFαは自然免疫系に、LTα と LTβは獲得免疫系に主に関連すると考えられる。このTNF/LT 遺伝子群は、ヒト6番染色体上に隣接して存在し、いずれもNF-κBシグナル経路で制御されるが、興味深いことに、その発現様式は遺伝子間で異なっている。特異的な遺伝子制御を可能にする機構として、哺乳類細胞でCCCTC-binding factor (CTCF)がクロマチンインスレーターを形成している。共通に発現調節を受ける遺伝子群は機能ドメインを形成しており、ドメイン間に境界配列(インスレーター)が存在して、エンハンサー等の効果が及ぶ遺伝子と及ばない遺伝子を区分している。我々は、TNF/LT 遺伝子領域におけるインスレーターを同定・解析する目的で、CTCF抗体を用いたChIP-on-chip解析およびEMSA解析を行った。その結果、TNF/LT 遺伝子領域内に複数個のCTCF結合部位が見出された。またRNA干渉法を用いたCTCFノックダウン実験により、TNF/LT 遺伝子群の発現が影響を受けたことから、この遺伝子群の発現制御にインスレーターが関与することが示唆された。また、CTCFはクロマチンループなどの高次クロマチン構造の形成に関与することが示唆されており、炎症応答におけるTNF/LT 遺伝子群の発現制御と高次クロマチン構造におけるCTCFの役割について考察する。