アクティブボード・2010年12月
・・・・・2010年12月 6日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第24回モロシヌス研究会
2010年 9月17日〜18日(阿蘇)
タイトル;MSM/Ms由来ES細胞を用いたFto遺伝子トラップマウスの表現型解析.
発表者; 館山 浩紀 氏
(熊本大学 生命資源研究・支援センター 表現型クリニック分野)
Abstract;
マウスは大きく分けてMus musculus domesticus,Mus musculus musculus,Mus musculus castaneus,Mus musculus bactrianusの4つの亜種に分類される(Moriwaki et al, 1994)。しかし、研究用近交系マウスのgenetic backgroundのほとんどは、Mus musculus domesticus由来であり、近交系間の遺伝的多様性が少ないといえる。そこで、野生マウスからの近交系樹立が行われてきた。そのひとつであるMSM/Msマウスは日本原産の野生由来マウスであり、castaneus種とmusculus種の交雑種であるMus musculus molossinusに属している。実験用マウスとして一般的なC57BL/6マウスとはゲノムの塩基配列が0.96%異なっており、その表現型もかなり異なっている。例えば、体が小さく俊敏で、発ガン抵抗性や高脂肪食による糖尿病の誘発に抵抗性を示すといった特徴を示している。これらのことからMSM/Msマウスは遺伝的にも形質的にもC57BL/6マウスとは大きく異なっている系統であると考えられる。従って、表現型の異なるこれらのマウス系統を用いて、遺伝子操作を行い、表現型の比較解析を行えば新たな知見が得られると期待される。
そこで、汎用実験用マウス系統由来であるTT2(C57BL/6とCBAのF1)ES細胞と、MSM/Ms由来ES細胞を用いて遺伝子トラップ法を行ない、両方で得られたトラップ系統の中から、肥満や代謝に関わっているFto(Fat mass and obesity associated)遺伝子トラップラインを選び、解析を行った。RT-PCRによる発現解析では、両ラインともホモ接合体でもFto遺伝子の発現が検出された。そこで定量RT-PCRを行った結果、Fto遺伝子の発現量はTT2由来のホモ接合体では14%、MSM/Ms由来のホモ接合体では4%となり、ハイポモルフであることがわかった。また、出生後の体重を測定したところ、TT2由来マウスでは体重の変化が認められなかったのに対して、MSM/Ms由来マウスでは雄のホモ・ヘテロ接合体に体重の減少が認められた。このことから、Fto遺伝子による影響が両系統では異なっていると考えられる。現在さらなる表現型解析を進めており、その結果について報告する。