アクティブボード・2010年5月
     ・・・・・2010年 5月 6日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・15th International Congress on Photobiology
 2009年 6月18日〜23日(Dusseldorf, Germany)

・4th Cell Stress Society International Congress on Stress Responses in Biology and Medicine
 2009年10月 6日〜 9日(札幌)

タイトル;Suppression of Melanin Production by Expression of HSP70.
     HSP70によるメラニン産生抑制
 
発表者; 星野 竜也 氏
   (熊本大学 大学院生命科学研究部 薬学微生物学分野)

Abstract;
 紫外線 (UV) により過剰なメラニンが産生されるとシミが形成され、美容・健康上大きな問題になる。従って、メラニン産生を抑制する物質は、シミの形成を防ぐ美白剤として有望である。しかしメラニンはUVから皮膚を保護する役割を持っているので、単にメラニン産生を抑制すると、UVによる皮膚傷害、DNA傷害を促進する危険性がある。そこでUVによる皮膚傷害、DNA傷害を悪化させることなくメラニン産生を抑制する美白剤が望まれている。最近我々はHSP (Heat shock protein) 70などのHSPは、UV依存の皮膚傷害、DNA傷害を抑制することを見出した。しかしながら、HSPがメラニン産生にどのような影響を与えるのかはよく分かっていなかった。そこで我々はHSP70のメラニン産生に対する効果を検討した。マウスメラノーマ由来細胞であるB16細胞に3-Isobutyl-1-methylxanthine (IBMX)を添加し、メラニン産生を誘導した。HSP70を過剰発現させると、このメラニン産生が抑制されることを見出した。また、HSP70過剰発現によりメラニン産生の律速酵素であるチロシナーゼの発現が転写レベルで抑制されることを見出した。一方、HSP70はチロシナーゼの転写因子であるMicrophthalmia-associated transcriptional factor (MITF)の発現には影響を与えなかった。そこで我々はHSP70がMITFと相互作用し、MITFの転写活性を抑制する可能性を考え、試験管内転写系を用いてこれを証明した。さらに、HSP70過剰発現マウスでは、UV照射後のメラニン産生が抑制されていることを見出した。これらの結果は、in vitro、in vivoにおいてHSP70がメラニン産生を抑制することを示唆している。この知見からHSP70の誘導剤は、UVによる皮膚傷害、DNA傷害を悪化させることなくメラニン産生を抑制する理想的な美白剤になることが期待される。