アクティブボード・2009年12月
     ・・・・・2009年12月 4日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第82回日本生化学会大会
 2009年10月21日〜24日(神戸)

タイトル;脱リン酸化酵素PP6は細胞のアポトーシスをコントロールする.
 
発表者; 梶原 隆太郎 氏
   (熊本大学 医学部保健学科 血液免疫検査学分野)

Abstract;
セリン・スレオニン脱リン酸化酵素は細胞周期のコントロール・代謝などを調節することが知られている。PP2A,PP4,PP6は共通の構造を持ち1つのサブクラスを形成している。私たちが発見したシグナル伝達分子alpha4はPP2A, PP4, PP6すべての分子と結合しその酵素活性を制御する。alpha4はリンパ球の抗原レセプターシグナル伝達経路に関与しリンパ球の活性化、抗体産生などを調節している。B細胞またはT細胞特異的なalpha4の遺伝子破壊マウスを用いた実験から、alpha4がリンパ球の生存・増殖に必須の分子であることが明らかとなっている。さらにalpha4を神経系で遺伝子破壊すると記憶・学習が障害されることを明らかとしてきた。記憶・学習のシステムではPP2Aが重要なはたらきをし、alpha4とPP2AがCAMKIIと結合し、酵素活性を制御することが示された。PP2Aはほとんどすべての組織で発現しているが、PP6は中枢神経系、心臓、免疫系を中心に発現することが報告されている。そこでalpha4が免疫系、心臓でPP6を介して細胞生存を制御するメカニズムを解析する目的でPP6機能を抑制するDominant-Negative PP6(DN-PP6)を作製した。HeLa細胞にDN-PP6を発現させたトランスフェクタントはTNFとシクロヘキシミドによるアポトーシスの誘導に抵抗性を示した。DN-PP6を発現するトランスフェくタントでは、p27分子の発現が増加していた。このことはPP6がp27分子を介してアポトーシスを制御することを示す。