アクティブボード・2009年12月
     ・・・・・2009年12月 4日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第57回日本ウイルス学会学術集会
 2009年10月25日(東京)

タイトル;Tetragalloyl-D-Lysine Dendrimer (TGDK)のM細胞標的能の検討とワクチンへの応用.
 
発表者; 甲斐 光 氏
   (熊本大学 大学院医学薬学研究部 薬学生化学分野)

Abstract;
【目的】HIVは主に粘膜面から体内に侵入し、腸管関連リンパ組織(GALT)で増殖するといわれており、HIV侵入を阻止するワクチン戦略を考えた場合、粘膜面へHIVの免疫を誘導することが重要である。粘膜面への免疫誘導において、M細胞を標的とする分子は粘膜ワクチンの効果的な免疫応答の誘導に重要な輸送体となると考えられる。本研究では、M細胞標的分子として合成したTetragalloyl-D-Lysine Dendrimer(TGDK)のM細胞標的能をアカゲザル回腸やヒトM細胞モデルを用いて検討した。また、TGDKにアカゲザルCCR5由来環状ペプチド(rcDDR5)を結合した新規粘膜ワクチンを経口投与し粘膜面における抗体誘導能を検討した。
【方法・結果】蛍光顕微鏡によりアカゲザル回腸切片のパイエル板においてM細胞マーカーであるGP2とTGDKの共局在が観察された。さらに、ヒトM-like cellsにおいてもTGDK/GP2の共局在が見られたことから、TGDKの非ヒト霊長類M細胞とヒトM細胞標的能が確認できた。また、TGDKを結合した抗原を経口投与したアカゲザルにおいてstool中に抗rcDDR5 IgA、また血清中にrcDDR5 IgGの誘導が確認され、これらの抗体によるSIVmac239の感染阻害効果もみられた。
【考察】TGDKはM細胞標的粘膜ワクチンに有用であると考えられる2)。
1)Kernéis, S. et al. Science 277: 949-952. (1997)
2)Misumi, S., Shoji, S. et al. J. Immunol. 182: 6061-6070. (2009)