アクティブボード・2009年12月
     ・・・・・2009年12月 4日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第33回蛋白質と酵素の構造と機能に関する九州シンポジウム
 2009年9月10日(唐津)

タイトル;霊長類M細胞の組織形態学的機能解析.
 
発表者; 三隅 将吾 氏
   (熊本大学 大学院医学薬学研究部 薬学生化学分野)

Abstract;
【目的】HIVは、主に粘膜から感染する。一度、感染が成立すると短時間で爆発的にウイルスが増殖し、完全に生体からウイルスを排除することは極めて難しい。したがって、理想のワクチンは、ウイルスの初発感染部位である粘膜においてウイルスの感染を阻止できる免疫応答を宿主に誘導できなければならない。したがって、粘膜ワクチンは、HIV感染を阻止するために、粘膜面での免疫応答と全身系の免疫応答を二段階で構築できることが期待できるため、HIVに対するワクチンを開発するにあたり極めて興味深い。しかしながら、HIV粘膜ワクチンを開発する際、粘膜面からワクチン抗原を取り込ませるには、粘液のバリアを回避し、的確に腸管のM細胞からワクチン抗原を効率よく取り込ませることが求められる。本研究では、霊長類M細胞とそれらを含むパイエル板等の組織の詳細な形態学的機能解析を行い、M細胞へワクチン抗原をデリバリーするための機能性分子の開発のための基礎研究をおこなった。
【方法・結果】回腸組織の形態学的マクロおよびミクロ解析によりアカゲザル回腸部位に絨毛が未発達の領域がパッチワーク状に点在していることを明らかにした。複数のリンパ小節を確認するとともに、管腔側からの抗原の取り込み口であるパイエル板M細胞を観察できた。さらにAuラベルされたポリオウイルスを用いた解析から霊長類レベルではじめて絨毛M細胞の存在を明らかにすることができた。
【考察】HIVワクチンの開発において、霊長類モデルは欠くことができない。本研究結果では、霊長類において、腸管管腔側からの取り込み口である2種類のM細胞が存在することを明らかにしたはじめての知見であり、HIV粘膜ワクチンを開発する上でパイエル板M細胞及び絨毛M細胞の両方を標的としたワクチン抗原デリバリーシステムを創製するために有用である。