アクティブボード・2009年10月
・・・・・2009年10月 1日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第15回小型魚類研究会
2009年9月12日〜13日(愛知)
タイトル;『Androgen receptor遺伝子のメダカ初期発生に果たす役割:血球、血管発生への関与』
発表者; 荻野由起子 氏
(熊本大学 発生医学研究所 生殖発生分野)
Abstract;
雄性ホルモン(Androgen)は内外生殖器や性淘汰に関わる二次性徴の発生分化を制御 することで、繁殖に必須である多様な雄性形質を規定している。一方、鳥類では、 卵黄に含まれる母親由来の性ホルモンが、胚発生や生存率を左右する一つの要因で あることが示唆されている。我々は、メダカ初期胚に雄性ホルモン (11-ketotestosterone)が含まれていることを明らかとし、ARb に対する Morpholino Oligo (MO)のメダカ受精卵への導入が、赤血球の分化抑制、卵黄静脈の走行異常を誘導し、この症状はARb mRNA導入により回復することを見出した。 AR antagonistであるFlutamideを投与し、原腸胚期から体節期にAndrogenシグナリングを阻害すると、赤血球血管発生双方に異常が現れ、この症状はAndrogenを同時 投与することで回復した。赤血球血管双方に症状が認められたことから、中胚葉性 細胞からヘマンジオブラストが分化する段階にAndrogenシグナリングの作用点があると予想された。ARb MO注入胚において、血球血管分化因子の遺伝子発現解析を 行ったところ、尾部側血島におけるLmo2およびGATA1の発現が減少していた。頭部側血島に由来するとされるl-plastin陽性のマクロファージは、Control MO、ARb MO注入胚双方に認められた。一方、ARaに対するMO導入胚では、顕著な症状は認められなかった。よって、ARbを介したAndrogenシグナリングが、尾部側血島における赤血球分化制御に関与していることが明らかとなった。これらの結果は、 Androgenシグナリングが生命機能に必須の初期胚発生現象に関わることを示唆する。