アクティブボード・2009年 5月
     ・・・・・2009年 5月 1日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・オリジナルデータ

タイトル;一アミノ酸変異によるHIV-1中和抗体2F5および4E10に対する中和感受性の増大.
 
発表者; 高宗 暢暁 氏
   (熊本大学 大学院医学薬学研究部 薬学生化学分野)
Abstract;
 MPER (membrane proximal external region) はHIV-1 ENVのgp41 サブユニットのウイルス膜近傍に位置する。多様性に富むHIV-1に対して広範囲に中和活性を示すことが知られているモノクローナル抗体2F5および4E10のエピトープはこのMPERに位置する。本研究において、これら二つのエピトープの間に位置するENVの668番目のアミノ酸の置換が、2F5および4E10への感受性を有意に増大させることが明らかになった。そのSer668Glyの変異により、2F5に対してはおよそ10倍、4E10に対してはおよそ3倍中和感受性が増大した。野生型Ser668と変異型Gly668の両方を含むHIV-1は2F5に対し、中間程度の中和感受性を示した。一方、変異型Gly668を含むHIV-1は、TAK779 (CCR5アンタゴニスト)、融合阻害剤T20、およびENVの糖鎖を認識する中和抗体2G20に対する中和感受性に変化は認められなかった。
 以上の結果から、ENVの668番目のアミノ酸はENVの限局的な立体構造に作用し、2F5お
よび4E10のエピトープを露出させることができると考えられる。この結果は、中和抗体誘導型のHIV-1 ENV免疫抗原のデザインに有益なコンセプトを与えると期待される。