アクティブボード・2009年 5月
     ・・・・・2009年 4月29日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・日本薬学会第129年会.
 2009年 3月26日~28日(京都)

タイトル;IL-4/IL-13で誘導されるAβクリアランス能:アルツハイマー病モデルマウスでの評価.
 
発表者; 川原 浩一 氏
   (熊本大学 大学院医学薬学研究部 細胞機能分子解析学分野)
Abstract;
 我々はin vitro において、抗炎症性サイトカインIL-4により、神経細胞保護効果能の高い2型ミクログリアのβアミロイド(Aβ)クリアランス機構が顕著に誘導できることを見い出した (J. Immunol., 181, 6503-6513, 2008)。このAβクリアランス機構がin vivoにおいても機能するかを検証するため、アルツハイマー病モデルマウスであるAPP23マウスを用いて、抗炎症性サイトカインの脳内微量注入を行い、マウスの空間認知能力への影響とAβ蓄積量の変化を解析した。 Aβ蓄積量が異なる月齢(4.5、6、9ヶ月齢)のAPP23マウス脳内にIL-4/IL-13を微量注入して、4〜7日後にかけてモリス水迷路試験による行動実験を行った。7日目の行動実験終了後、4%パラホルムアルデヒドで灌流固定し凍結脳切片を用いて抗Aβ抗体による免疫染色を行い、薬物注入側と反対側のAβ蓄積量を比較した。 
 その結果、モリス水迷路試験による行動実験では、Aβ繊維化が進行していない4.5ヶ月齢では有意に、また6ヶ月齢でも効果を認めた。しかし、繊維化が進んだ9ヶ月齢では効果がみられなかった。また、抗Aβ抗体を用いた免疫組織染色では、4.5ヶ月齢マウスにおいて、反対側に比べて薬物注入側では、Aβ蓄積量の有意な減少がみられた。IL-4/IL-13 で誘導されるAβクリアランスは、アルツハイマー病の新規治療法につながる候補の一つとなる可能性が示された。