アクティブボード・2009年 4月
・・・・・2009年 4月 5日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第31回 日本分子生物学会年会.
2008年12月 9日~12日(神戸)
タイトル;AAAタンパク質spastinの線虫ホモログSPAS-1による微小管切断機構の解析.
発表者; 松下(石躍) 由佳 氏
(熊本大学 発生医学研究所 分子細胞制御分野)
Abstract;
近年,AAA (ATPases Associated with various cellular Activities) タンパク質に起因するヒト疾患が相次いで報告されている。AAAタンパク質の一つであるspastinは,ヒト疾患遺伝性痙性対麻痺の原因因子の一つである。最近,spastinが微小管切断活性を有することが示されたが,その詳細な分子メカニズムについては分かっていない。これを明らかにするために,線虫のspastinホモログSPAS-1の微小管に対する作用メカニズムをin vitroおよびin vivo両面から解析した。
線虫の初期胚観察の結果,SPAS-1は核周辺部に存在し,SPAS-1欠失変異体では微小管は中心体領域に多く見られた。一方,in vitroでSPAS-1が濃度依存的にオリゴマーを形成し,さらにSPAS-1のATPase活性が微小管存在下で促進されることを見出し,spastinの作動原理を理解する上で重要な新たな知見を得た。
SPAS-1はN末端にMIT (microtubule interacting and trafficking) ドメイン,C末端にAAAドメインをもつ。そこで,様々なSPAS-1部分欠失コンストラクトを作製し,tubulinとのpull down assayを行ったところ,SPAS-1はMITドメインではなく,MITドメインとAAAドメインの間の領域 (MTBD: microtubule binding domain) でtubulinと直接相互作用することが明らかとなった。
さらに,全長SPAS-1と酸性残基が豊富なtubulin C末端ペプチドを用いて,pull down assayを行ったところ,相互作用が認められた。一方,ヒト培養細胞において野生型SPAS-1を強制発現させると,微小管の消失が見られるが,リング状オリゴマーのpore周辺に位置する塩基性残基にアラニンを導入した変異型SPAS-1では,微小管の消失は認められなかった。これらの結果から,SPAS-1はMTBDの基質認識に加えて,C末端のAAAドメインでtubulin C末端を認識することが示唆された。