アクティブボード・2009年 3月
・・・・・2009年 3月 5日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第31回 日本分子生物学会年会.
2008年12月 9日~12日(神戸)
タイトル;線虫fidgetinホモログFIGL-1の細胞機能におけるSUMOの関与.
発表者; 鬼武 彰宣 氏
(熊本大学 発生医学研究センター 細胞複製分野)
Abstract;
AAA (ATPases Associated with diverse cellular Activities) タンパク質は,よく保存されたATPaseドメインを共通に持ち,タンパク質およびその複合体の立体構造をエネルギー依存的に変換するリング状分子シャペロンである。近年,AAAタンパク質に起因するヒト遺伝性疾患や発生異常が明らかになってきた。その一つとして,主に内耳や目の発達異常,行動異常を示すfidget変異マウスの原因因子としてfidgetinが同定された。我々はこれまでに,線虫fidgetinホモログFIGL-1を用いて詳細な生化学的解析を行ってきた。今回はFIGL-1の生体内機能を明らかにするために,遺伝細胞生物学的解析を行った。
先にFIGL-1を培養細胞で発現させると核局在性を示すことを報告している。今回は,その核局在性を決定付ける核移行シグナル配列PKRVKを同定した。この配列に変異を導入するとFIGL-1は細胞質に局在し,さらに細胞質局在性タンパク質にこの配列を付加すると核局在を示した。最近,ショウジョウバエのfidgetinホモログは細胞質に局在し,微小管の切断に関与することが報告された。しかしながら,線虫FIGL-1の核移行シグナルを欠損させ,細胞質に移行させても微小管の切断は観察されなかったことから,線虫とショウジョウバエのfidgetinホモログは異なる機能をもつことが示唆された。
また,FIGL-1と翻訳後タンパク質修飾因子の1つSUMOとの相互作用を酵母ツーハイブリッド法やプルダウン法により明らかにした。しかしながら,SUMOと3次元構造が類似するユビキチンやNedd8はFIGL-1と相互作用しなかった。FIGL-1欠失線虫もSUMO欠失線虫もともに生殖腺形成不全の表現型を示すことを確認している。最近,FIGL-1は有糸分裂過程の制御に関わっていることが報告された。以上のことから,FIGL-1はSUMOと特異的に相互作用して核内機能に関わっていると考えられる。FIGL-1及びSUMOに対する抗体を用いた細胞内共局在の観察を現在行っており,併せて報告したい。