アクティブボード・2009年 3月
     ・・・・・2009年 3月 5日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第67回日本癌学会学術総会.
 2008年10月28日~30日(名古屋)

タイトル;オートファジーがトリプシノーゲンとリソソームの出会いを介して急性膵炎の引金を引く.
 
発表者; 大村谷 昌樹 氏
   (熊本大学 大学院先導機構、熊本大学 生命資源研究・支援センター)
Abstract;
 1996年にWhitcombらは遺伝性膵炎患者のゲノムDNA よりトリプシノーゲン遺伝子の点突然変異を報告した。その後、遺伝性膵炎遺伝子の他の候補として、我々は膵臓内在性のトリプシンインヒビターであるserine protease inhibitor, Kazal type 1 (SPINK1) に注目し、遺伝性膵炎患者ではアミノ酸置換を伴う点変異の頻度が高いことを報告した(J Gastroenterol 2001;36:p612)。さらに膵炎発症を期待してSpink3遺伝子 (SPINK1のマウスホモログ) ノックアウトマウスを樹立した。このマウスでは形態的にほぼ成熟した膵腺房細胞が形成される胎生16.5日から細胞質に変性が始まり、出生直後、急激にその変性が激しくなるが、電顕で観察すると、その変性の正体はほぼ細胞質を埋め尽くす多数の空胞であった。この空胞の本体は意外にもオートファジーであった (Gastroenterology 2005;129:p696)。
 オートファジー(自食)とは細胞質成分をリソソームで分解するための主要な分解機構で、飢餓や異常蛋白が細胞質内に蓄積した際に誘導され、生体の恒常性維持に深く関与している。
 膵炎発症とオートファジーの関連を明らかにする目的で、まず実験性膵炎モデルでみられる空胞がオートファジーに由来することをオートファゴソームに特異的な分子マーカーであるLC3を用いて明らかにした。さらにオートファゴソームの膜伸長に必須であるautophagy-related gene 5 (Atg5)の条件的ノックアウトマウスを用いて、膵臓外分泌細胞特異的オートファジー欠損マウスを樹立した。このマウスは生理的な条件下では特に異常を来さなかった。そこで膵炎惹起刺激を行ったところ、膵炎の重症度が低下した。さらに単離した膵腺房細胞にトリプシノーゲンの活性化刺激を行ったところ、活性化が見られなかったことから、オートファジーがトリプシノーゲンとリソソーム酵素との出会いを仲介することで異所性のトリプシン生成、つまり膵炎発症にかかわっていることを明らかにした (J Cell Biol 2008;181:p1065)。