アクティブボード・2009年 2月
     ・・・・・2009年 2月 5日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・BMB2008 (第31回日本分子生物学会年会・第81回日本生化学会大会 合同大会).
 2008年12月9日~12日(神戸)

タイトル;高頻度鎖肛を示すDanforth's short tail (Sd),Skt GT ダブル変異マウスの解析.
 
発表者; 久嶋 史枝 氏
   (熊本大学 発生医学研究センター 臓器形成分野)
Abstract;
 鎖肛は最も頻度の高い先天性疾患の一つで、約2500〜5000出生に1例の割合で見られる。その原因は、発生期の肛門形成に何らかの異常が起こっているためとされるが、その詳細は未だ明らかになっているとは言えない。
 正常胚では総排泄腔CloacaがE11.5にUrorectal Septum(URS)によって前方の泌尿生殖洞と後方の直腸洞とに分割され始め、E12.5までにURSがCloaca membraneに達して完全に分割が終了する。E13.5になると、Cloaca membraneの後方部分にApoptosisが誘導されて肛門が開口する。これら一連の肛門発生のいずれの段階で異常が起こっても鎖肛が発生するとされ、これまで鎖肛の動物モデルとして、teratogenicモデル、transgenicモデル、自然発生モデル等が報告されている。その中でもSdマウスは自然発生の鎖肛モデルとして代表的である。
 2006年、マウス染色体第2番に原因遺伝子座を持つSd変異マウスと、Sdと1cMの遺伝的距離を持つSickle tail変異マウス(SktGt)を交配させて得られたダブル変異マウス(Sd SktGt /+ SktGt)が、出生後二週間以内に死亡する事を、我々のグループより報告した。今回の研究においてE19.5のSd SktGt /+ SktGt胚を使用してその表現型を詳細に検討したところ、驚くべき事にSd SktGt /+ SktGtは100%の鎖肛発生率を示す事を発見し(Sd SktGt /+ +は80%の鎖肛発生率を示す)、鎖肛のタイプはfistulaタイプが最も多かった。我々の解析では、C57BL/6バックグラウンドにおけるSdマウスの鎖肛発生率はヘテロ接合体で50%であり、かつ、Sktの発現はcloaca近傍にも認める事よりSktの変異がSdマウスの肛門発生異常を重篤化していることを強く示唆している。
 またダブル変異マウスの生存率を調べると、Sd SktGt /+ SktGtマウスはほぼすべてが生後二週までに死亡し、Sd SktGt /+ +マウスは生後二週での生存率が約30%であった。