アクティブボード・2009年 1月
     ・・・・・2009年 1月 6日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第31回 日本分子生物学会年会.
 2008年12月9日~12日(神戸)

タイトル;Danforth’s short tail (Sd), SktGtダブル変異マウス胚における脊索形成異常の解析.
 
発表者; 安藤 卓 氏
   (熊本大学 発生医学研究センター 臓器形成分野)
Abstract;
 Danforth’s short tail (Sd)は、マウス第2番染色体に位置している自然発生で得られた脊椎形成、泌尿生殖器形成に影響を及ぼす半優性変異である。この変異マウス胚は、E9.0以降より脊索が細くなり、連続性を失いながら消失する興味深い表現型を示す。Sd原因遺伝子座の近傍に位置するSickle tail遺伝子(Skt)の変異(SktGt)とSdのダブル変異マウス(C57BL/6に10世代以上継代)の脊椎形成がより重篤になることを、2006年、我々のグループより報告した。Sd, SktGtダブル変異マウス胚の脊索異常がSd変異マウス胚より重篤になることが原因と考え、今回の研究でSd, SktGtダブル変異マウス胚の脊索を経時的に解析した。SktGtのレポーター遺伝子、β-geoは脊索で特異的に発現するため、X-gal染色により胚の脊索形態を経時的にモニタリングに使用した。また、ダブル変異マウス胚の脊索でのShhの発現を調べるためwhole-mount in situ hybridization法を施行した。同時に体節におけるPax1 mRNAの発現も調べた。ダブルヘテロ変異マウスの早期胚の脊索はE9.0まではほぼ正常と変わらなく発生するが、E9.5に頭部より脊索の分断化が始まりE13.5で尾部の一部を除いて胚全体の脊索が消失していた。ダブルホモ変異マウス胚では、E9.0で頭部より脊索の分断化が見られ、E9.5でほぼ胚全体の脊索が消失していた。過去報告されているSd変異マウス胚の脊索消失時期は、ヘテロ変異胚ではE14.0以降、ホモ変異胚ではE10.5以降であり、C57BL/6バックグラウンドのダブル変異マウス胚は、Sd変異マウス胚より早期に脊索が消失していた。このことは、ダブル変異マウス胚でより早期に脊索消失する事が、脊椎形成異常を重篤にする原因である事を示唆している。以上に加えて、ダブルヘテロ変異マウス胚およびダブルホモ変異マウス胚いずれにおいても、脊索消失までShh mRNAの発現は保たれており、また、体節におけるPax1 mRNAの発現も脊索残存レベルで正常に発現していることを確認した。このことは、ダブル変異マウス胚の脊索は体節より椎板発生を出来うる機能を保持し、かつ、体節も脊索よりのシグナルを受けて椎板への分化を経て中軸骨格発生能を保持していることを示唆している。