アクティブボード・2008年12月
     ・・・・・2008年12月 3日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第22回日本エイズ学会学術集会・総会.
 2008年11月26日~28日(大阪)

タイトル;中和抗体高感受性R5臨床分離株の抗V3抗体によるin vitro中和逃避ウイルス誘導.
 
発表者; 楢原 知里 氏
   (熊本大学 エイズ学研究センター 病態制御分野)
Abstract;
<目的>
 KD-247はHIVのgp120-V3のtip領域に反応し、臨床分離株に対しても交差中和を示す強力なモノクローナル抗体である。また、R5臨床分離株の中和逃避メカニズムについてはまだ解明されていない部分が多い。今回複数の中和抗体に高感受性のR5臨床分離株MTAを用いてKD-247に対するin vitro中和逃避ウイルス誘導を行った。
<方法>
 MTAウイルスをPM1/CCR5細胞に感染させ、KD-247の濃度を徐々に上げながら継代培養し、逃避ウイルスを誘導した。その際、抗体の濃度を高濃度から急速に上げる場合と低濃度から緩徐に上げる場合の2パターンに分けて、パッセージごとにEnvのシークエンスを行い、耐性を付与する変異部位の同定を行った。また培養上清中のウイルスの中和感受性の変化をPM1/CCR5細胞を用いた中和アッセイで評価した。
<結果>
 KD-247の濃度を高濃度(1μg/ml)から急激に上げてパッセージすると、2パッセージ(2P)でV3-tipにGPGR→GQGR (P313Q)変異が現れ、5P (20μg/ml)で100% P313Qに置き換わる。一方低濃度(0.05μg/ml)からゆっくりと濃度を上げていくと、5P (0.4μg/ml)でV3-tipにGPGR→GPGK (R315K)変異が現れ、14P (10μg/ml)で100% R315Kに置き換わるが、1000μg/mlまで濃度を上げてもP313Q変異は出現しなかった。またどちらのパッセージでも、V3-tipに変異が出現し始めるとともにKD-247に対し耐性に傾き始め、100%変異ウイルスに置き換わると完全耐性となった。
<結論>
 中和抗体の濃度の上げ方を変えることで、V3-tipの変異が異なっていた。この違いがfitnessと耐性度に与える影響を調べるために、感染性クローンを作製し検討する予定である。