アクティブボード・2008年 9月
     ・・・・・2008年 9月 6日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第21回バイオメディカル分析科学シンポジウム.
 平成20年8月6日~8日(札幌)

タイトル;ファージディスプレイ法を用いた高ビリルビン親和性アルブミン変異体の探索と結合性評価.
 
発表者; 蓑毛 藍 氏
   (熊本大学 大学院薬学教育部 薬物動態制御学分野)
Abstract;
 核黄疸等の原因となるビリルビンは,不溶性であり高いアルブミン結合性を示すため,従来の血液透析によって除去困難である.近年,ビリルビンを代表とするアルブミン結合性毒素を除去する新しい血液浄化療法として,透析液中にアルブミンを含むMARSが開発されたが,血清由来のアルブミンを用いている為,臨床効果が低い.本研究では,ビリルビンをより効率的に除去するアルブミン透析の開発を目指し,高ビリルビン親和性アルブミン変異体をファージディスプレイ法によって探索した.まず始めに,HSAdomainⅡAにおけるBR結合に重要である残基を同定するために,Lys,Argの12残基をLys,Arg,Glu,Glyの 4残基にランダムに変異を導入したHSAdomainII領域を提示させたファージライブラリを作製した.ビリルビンをカップリングさせたEAH-Sepharose 4Eを用いて高結合ファージクローンをスクリーニングした.選択した111クローンのBR結合活性をペルオキシダーゼ法によって評価した.その結果wild typeに比べて8クローンが高いBR結合能を有していた.そこで,これらのシーケンス解析を行ったところ,8クローン中7クローンの195Lys,さらに8クローン全てにおける199Lysが塩基性アミノ酸に保持されていた.これは,分子内にジカルボン酸構造を持つBRとイオン的相互作用をするアミノ酸残基が,195,199位であることを示唆している.興味深いことに,この結果は分子動力学シミュレーションを用いて報告されたHSA分子上のBR結合部位と一致している.(Moosavi- Movahedi Z et al. Biophys. Chem. 2007; 125, 375–387.) 今回スクリーニングにより得られた8クローンのタンパク質レベルでの結合評価について合わせて報告する.