アクティブボード・2008年 8月
     ・・・・・2008年 8月 4日更新・・・・・

研究発表を行った学会; 日本薬学会 128年会
・.
     2008年 3月 26日~ 28日(横浜)

タイトル;細胞膜上での一酸化窒素放出における脂肪酸結合の影響.
 
発表者; 異島 優 氏
   (熊本大学 薬学部 薬物動態制御学講座、医薬高分子学講座)
Abstract;
【目的】血中に最も多量に存在するヒト血清アルブミン(HSA)は、S-ニトロソ化(SNO)反応を介して一酸化窒素(NO)を運搬し、血管拡張作用や抗菌活性など新たな生物活性を有することが知られている。またHSAは、脂肪酸などの内因性リガンド輸送能を有し、その際にHSAの構造や機能変化を及ぼすことが明らかになっている。我々はSNO-HSAの作製を行う過程で、内因性リガンド結合の有無によりSNO-HSAからのNOの放出が変動することを見いだした。このことは、内因性のリガンドがSNO-HSA量の制御を行なっていることを示唆する。そこで今回、内因性リガンドを結合させたSNO-HSAを作製し、内因性リガンド結合が及ぼすNO放出能への影響に関して検討を行った。
【方法】HSAは、NOドナーであるS-nitroso-glutathioneや活性化したRAW 264.7 cellと反応させ、SNO化を行った。RAW 264.7 cellの活性化は、interferon-γとlipopolysaccharideを加え、37℃、6 hr反応することで行った。SNO-HSAのSNO化効率は、グリース試薬を用いたHPLC-flow-reactor systemにて測定した。HepG2 cellへのSNO-HSAの結合は、FITC-HSAを用いて蛍光顕微鏡やFACSにて解析した。
【結果及び考察】SNO-HSAに内因性リガンドを結合させ、そのリガンド結合HSAのSNO転移反応を解析したところ、 生体内に豊富に存在する脂肪酸であるオレイン酸によりSNO転移反応の有意な上昇が観察され、それは脂肪酸結合量依存的なものであった。このことは、SNO化部位である34位の遊離CysのSH基の反応性の増大、さらに細胞への結合性の増大に起因するものと考えられる。以上より、循環血中における遊離脂肪酸は、SNO-HSAからのNO放出を制御していることが示唆された。