アクティブボード・2008年 8月
・・・・・2008年 8月 2日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第8回日本蛋白質科学会年会.
2008年6月10日~12日(東京)
タイトル;線虫由来p97ホモログCDC-48.1のATP加水分解機構の解析.
発表者; 錦織 伸吾 氏
(熊本大学 発生医学研究センター 細胞複製分野)
Abstract;
p97は小胞体関連分解や膜融合など様々な細胞機能に関与するAAAファミリータンパク質である。p97はN末端ドメインと2つのAAA型ATPaseドメイン(D1およびD2)から構成され、ホモ6量体のリング構造を形成する。D1はほとんどATPase活性を示さないため、D2でATPを加水分解して機能すると考えられているが、ドメイン間およびサブユニット間でどのように協同して働いているかは不明である。本研究では、線虫由来p97ホモログCDC-48.1を題材に、p97のATP加水分解機構を解析した。
D1のヌクレオチド結合能を欠損させるとD2のATPase活性は完全に消失した。またD1の触媒残基に変異(E311Q)を導入しATP加水分解能を消失させると、D2のATPase活性は野生型の20%程度だが、E311Qに加えさらにD1のセンサー1やアルギニンフィンガーへ変異を導入すると、D2のATPase活性は野生型の80%程度まで回復した。これらの結果から、D2のATPase活性はD1のヌクレオチド結合状態によって変化し、D1がADP結合型の時、D2が活性型になると考えられた。これはD1のATPase活性を促進させるとD2のATPase活性が減少するという結果とも一致した。また、D2のATPase活性はHill係数が2.0を示し、わずかなATPアナログを添加するとATPase活性が強く阻害されることから、サブユニット間では正の協同性を示すことが分かった。本発表ではp97のATP加水分解サイクルの分子機構について議論したい。