アクティブボード・2008年 5月
     ・・・・・2008年 5月 2日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第30回日本分子生物学会年会・第80回日本生化学会大会合同大会 BMB2007
 2007年12月11日~15日(横浜)

タイトル;小胞体ストレス-CHOP経路の二面性の解析.
 
発表者; 後藤 知己 氏
   (熊本大学 大学院医学薬学研究部 分子遺伝学分野)
Abstract;
 小胞体は、細胞内外からの種々のストレスにより、その機能が障害され、小胞体内にunfoldあるいはmisfoldした蛋白質が蓄積する。これに対して細胞は、翻訳抑制、小胞体分子シャペロン群誘導、小胞体関連分解系活性化などの小胞体ストレス応答経路を活性化し、小胞体機能を改善・維持しようとする。しかし、条件によってはアポトーシス経路が活性化され、ストレスを受けた細胞全体が処理される。そのため小胞体ストレス経路は、細胞内ストレスセンサーとして働き、種々のストレスから細胞を保護する。またストレスの種類・強度によっては、機能障害をおこした細胞をアポトーシスによって排除することにより、個体保護機構として機能している。しかし、ストレスによっては過剰なアポトーシスが誘導されるため、小胞体ストレス経路は種々の病態に深く関与している。しかし、これまで小胞体ストレスの初期の感知機構や小胞体機能の保護機構についての研究は目覚ましく進展したものの、細胞機能保護に向う場合とアポトーシスに向う場合との違いがどのような分子的基盤に基づくかについては、今だ不明の点が多い。また、小胞体ストレス誘導性アポトーシス経路についても、転写因子CHOPの関与などが明らかにされてはいるが、具体的な分子機構については、なお不明の点が多く残されている。これまでに我々は、炎症病態にも小胞体ストレス経路が深く関与していることを報告している。炎症モデルにおいて、個体レベルでも、マクロファージ系培養細胞においても、小胞体ストレスー転写因子CHOP経路が誘導された。ところが炎症においては、CHOP経路がアポトーシス誘導ではなく、炎症反応活性化経路として主に働くことが明らかとなり、小胞体ストレス経路全体だけでなくCHOP経路自体にも二面性があることが示された。さらに炎症誘導刺激と典型的な小胞体ストレス誘導刺激とでは、CHOP誘導の下流だけでなく、上流経路においても違いがあることがわかり、CHOP関連シグナル系全体の解析を現在進めている。