アクティブボード・2008年 2月
     ・・・・・2008年 2月 5日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第30回日本分子生物学会年会・第80回日本生化学会大会合同大会 BMB2007
 2007年12月11日~15日(横浜)

タイトル;Yeast Genetic Analysis Reveals Unique Characteristics of the D1 AAA ATPase domain of Cdc48p/p97
Cdc48p/p97のD1 AAA ATPaseドメインの特異な性質.

発表者; 江崎 雅俊 氏
   (熊本大学 発生医学研究センター 細胞複製分野)
Abstract;
 AAAファミリータンパク質は,ATPの加水分解によるエネルギーを利用して,基質タンパク質のunfoldingや脱会合,脱凝集などを行う。そのATPaseドメインは,中央に孔を持つ6量体リング構造を形成する。リング孔には芳香族アミノ酸残基があり,AAAタンパク質の機能,特に基質タンパク質のハンドリングに必要であることが明らかになってきている。
 AAA ATPaseドメインを2つ持つCdc48p/p97は,真核細胞に普遍的に存在するAAAタンパク質で,様々な細胞機能を有し,細胞の増殖に必須である。我々は,様々な変異型Cdc48pを酵母で発現し,CDC48欠損を相補できるかどうか遺伝学的解析を行った。その結果,C末端側のAAA ATPaseドメイン(D2)のATPase活性は必須であり,リング孔の芳香族残基の変異は致死であったことから,他のAAA ATPaseドメインと同じ特性を示した。一方,N末端側のAAA ATPaseドメイン(D1)のATPase活性はその機能に必須ではなかった。精製Cdc48pを用いた解析では,D1ドメインは6量体形成に必須であることから,D1ドメインの必須機能はオリゴマー形成のみであることが示唆された。D1ドメインのリング孔残基は芳香族アミノ酸ではないことも他のAAA ATPaseドメインとは異なる。驚くべきことに,D1リング孔残基を芳香族残基に置換したCdc48pのみを発現する酵母は増殖することができず,野生型Cdc48pと共発現する酵母の増殖は非常に阻害された。このことは,D1ドメインは他のAAA ATPaseドメインとは極めて異なる特性を持っており,それがCdc48pの機能に必要であることを示している。