アクティブボード・2008年 2月
・・・・・2008年 2月 5日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第30回日本分子生物学会年会・第80回日本生化学会大会合同大会 BMB2007
2007年12月11日~15日(横浜)
タイトル;DNA2重鎖切断修復におけるRAD18の役割.
発表者; 渡邉 健司 氏
(熊本大学 発生医学研究センター 組織制御分野)
Abstract;
DNAは、紫外線や放射線等の外的要因および活性酸素等の内的要因により常に種々のストレスにさらされている。これらのダメージによって生じたDNAの“傷”は、その傷の種類に応じてさまざまな方法で修復されることにより、遺伝子の変異や細胞死といった細胞の生存に不都合な状況を回避している。われわれは、DNAの複製後修復に関与しているヒトhRAD18遺伝子を同定し、そのノックアウトマウスを作製した。Rad18ノックアウトマウス由来の細胞は、紫外線照射、MMS (アルキル化剤)またはMMC (架橋剤)のようなDNAに特殊な損傷を形成する処置に対して、高い感受性を示した。紫外線照射やMMS処理等により生じたDNA損傷によりDNA複製機構が停止すると、RAD18はその部位に蓄積し、PCNAをモノユビキチン化するユビキチンライゲース;E3であることを発見した。今回、RAD18が鋳型DNAの傷によって複製機構が停止した際に生じる特徴的なY字型のDNA構造を認識する重要なたんぱくであることを明らかにした。またこのことが引き金となり、通常のDNA複製酵素のかわりに、損傷乗り越え複製酵素と呼ばれる特殊なDNA複製酵素が複製の場にリクルートされる。これにより、未修復の損傷を含む鋳型DNAの複製(損傷乗り越え複製)を開始する”ポリメラーゼスィッチングモデル”を提唱した。放射線照射やブレオマイシン処理等のDNAの2重鎖切断に対しても、Rad18はその損傷部位に集積する。RAD18がDNAの2重鎖切断部位に集積する役割、およびその修復に関与しているか等解明されていない点が多い。われわれは、ヒトRAD18がDNA2重鎖切断時に、紫外線やMMSなどによるDNA損傷時とは異なる機構で2重鎖切断部位にリクルートされることを見いだした。さらにDNA2重鎖切断部位において、hRad18が前述の「PCNAのモノユビキチン化によるポリメラーゼスィッチングモデル」とは異なった重要な役割をはたしていることを示す実験結果を得た。
今回、DNAの2重鎖切断修復におけるRad18の新たな役割を中心に、考察したい。