アクティブボード・2008年 1月
・・・・・2008年 1月 7日更新・・・・・
研究発表を行った学会;
・第30回日本分子生物学会年会・第80回日本生化学会大会合同大会 BMB2007
2007年12月11日~15日(横浜)
タイトル;C/EBP homologous protein (CHOP) はCaspase-11を介して膵炎を重症化する.
発表者; 陶山 浩一 氏
(熊本大学 発生医学研究センター 臓器形成分野)
Abstract;
(背景)急性膵炎は、膵内でトリプシンが活性化されて膵および膵周囲組織が自己消化に陥る疾患である。その発症メカニズムは不明の点が多い。近年、細胞死の経路の一つとして小胞体ストレス応答が注目されている。この経路では細胞内の不良蛋白の蓄積に伴い小胞体ストレス応答が誘導され、最終的には細胞死に至るという。その経路の主要な因子としてCHOPがある。CHOPはCaspase-11を介してIL-1βを発現させ、炎症を活性化させる役割も有する。マウスのSepticモデルではCHOPが肺の炎症の進展に関わっているとされる。以上より、CHOPが膵炎の重症化に関与する可能性がある。
(目的)CHOPと急性膵炎の関係をCaspase-11の発現より検討する。
(方法)急性膵炎モデルとして、セルレインを腹腔内投与し過剰な膵外分泌刺激を負荷したマウスを用いて膵臓における小胞体ストレスの発現をRT-PCR法で解析した。また、小胞体ストレス応答に必須な転写因子であるCHOPの遺伝子欠損マウスを入手し、同様にセルレイン膵炎モデルを作成して表現型を解析した。(結果)膵炎の重症度に応じてCHOPの発現が増強することをRT-PCR法で確認した。すなわち、膵炎の重症度に応じて小胞体ストレスの発現は増強した。同様に、膵炎の重症度に応じてCaspase-11、IL-1βの発現が増強することを確認した。また、CHOP欠損マウスでは、組織学的に膵炎の程度が軽減した。一方、Caspase-11やIL-1β等の炎症を促進する物質の活性は減弱しており、膵炎の進展にその経路が関与していることが示された。
(考察)CHOPがCaspase-11を介して膵炎の重症化に関与する可能性が示唆された。
(C/EBP Homologous Protein Is Crucial for the Acceleration of Experimental Pancreatitis: Biochemical and Biophysical Research Communications: in press.)