アクティブボード・2008年 1月
     ・・・・・2008年 1月 7日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第30回日本分子生物学会年会・第80回日本生化学会大会合同大会 BMB2007
 2007年12月11日~15日(横浜)

タイトル;神経幹細胞の自己複製におけるSprouty4の働き.

発表者; 柏木 太一 氏
   (熊本大学 発生医学研究センター 転写制御分野)
Abstract;
 中枢神経系を構成するニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトは神経幹細胞を共通の前駆細胞として誕生する。神経幹細胞のin vitro 培養系ではbFGF添加により未分化性が維持される。これまでに実施した、bFGFの存在下、非存在下での神経幹細胞培養系におけるマイクロアレイを用いた遺伝子発現プロファイル解析の結果より、<I>sprouty</I>遺伝子群に着目した。Sprouty群はFGFシグナル経路などのreceptor tyrosin kinase経路の抑制因子として働く。Sprouty群の多くは胎仔期の中枢神経系で発現が認められるが、神経系の発生においてどのような役割を果たしているか不明である。したがって、Sprouty群の神経系における働きを解析することにより、神経幹細胞の特性や神経系の発生の理解に寄与すると考えられる。本研究は、主として神経幹細胞の自己複製におけるSprouty群の機能解析を目的として実施した。
 Sprouty群は哺乳類では4つのアイソフォームが存在する。Sprouty群はbFGFにより発現が誘導されることから、フィードバックによりbFGFシグナルを調節していると推測される。マウス胎仔脳より単離した神経幹細胞画分におけるsprouty群の発現をRT-PCR法により調べると、sprouty4の発現が最も高く、また、in situ hybridization法によりマウス胎仔脳においてもその発現が認められたので、Sprouty4を中心に解析を進めた。神経幹細胞画分においてSprouty4の強制発現は細胞増殖を抑制した。また、未分化性の指標であるneurosphere形成能もSprouty4の強制発現ベクターの導入により著しく低下した。これらのことからSprouty4は神経幹細胞において、増殖と分化という自己複製における重要な二つの異なるイベントの分岐を制御している可能性が示唆された。