アクティブボード・2007年11月
     ・・・・・2007年11月 2日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・日本薬学会 第127年会、2007年3月28~30日(富山)

タイトル;酸化LDLによる悪玉アディポサイトカイン産生亢進とその分子機序.

発表者; 國安 明彦 氏
   (熊本大学大学院 医学薬学研究部 分子機能薬学講座 細胞機能分子解析学)
Abstract;
【目的】脂肪細胞における酸化ストレスとアディポサイトカインの分泌異常は、メタボリックシンドローム発症に深く関与することが示唆されている。我々は、スカベンジャー受容体CD36による酸化LDLの取り込みが、プラスミノーゲンアクチベーター阻害因子1(PAI-1)およびレジスチンの発現を著明に増大させることを見出した。そこで、両分子の分泌促進機序の解析および発現誘導を担う酸化LDL成分の探索を、マウス3T3-L1脂肪細胞を用いて行った。
【方法・結果】分化後10日目の3T3-L1脂肪細胞に酸化LDLを添加した後、mRNAおよび培養上清を回収し、ノーザンブロットおよびウェスタンブロット法でPAI-1とレジスチンの発現量を測定した。両分子は酸化LDL濃度依存的に分泌増大が起こり、CD36機能阻害抗体でその発現は抑制された。PAI-1では、蛋白質発現に先行してmRNA量の発現増大が見られたことから、転写活性化を介することが示された。一方、レジスチンでは酸化LDL添加後でもmRNA量に変化は見られなかったが、ポリゾーム解析の結果から翻訳活性化が起こっていることが判明した。さらに、ルシフェラーゼアッセイにより、この翻訳活性化には3’-非翻訳領域が重要であることが示唆された。また、両分子の分泌促進を誘導する酸化LDL中の成分を検索した結果、PAI-1発現にはリゾリン脂質が、レジスチン発現には脂質酸化物が関与していることが明らかとなった。
【結論】酸化LDLは、異なる酸化変性脂質を介し、かつ異なる分子発現機序により、悪玉アディポサイトカインであるPAI-1とレジスチンの発現増大を引き起こした。脂肪組織において、酸化LDLは酸化ストレスとメタボリックシンドローム発症を結びつける重要なメディエーター候補と考えられる。