アクティブボード・2007年11月
     ・・・・・2007年11月 2日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・第39回日本動脈硬化学会、2007年 7月13~14日(大阪)

タイトル;コレステロール負荷に伴うマクロファージ小胞体の変化−コレステロールエステル化コンパートメントとして機能する新たな小胞状オルガネラの形成.
Changes in endoplasmic reticulum of cholesterol-rich human macrophages; generation of novel vesicular organelle specialized for cholesterol esterification.

発表者; 坂下 直実 氏
   (熊本大学 大学院医学薬学研究部 細胞病理学分野)
Abstract;
 高脂血症病態では動脈壁に浸潤したマクロファージ(Mφ)が変性LDLを取り込み、小胞体(ER)酵素であるacyl coenzyme A:cholesteryl acyltransferase 1(ACAT1)によってコレステロールをエステル化して泡沫細胞化する。われわれは泡沫化ヒトMφのACAT1はERに由来する特殊な小胞状オルガネラ(ACAT1 vesicle)に存在することを発見した(Sakashita N. Am J Pathol 156:227-236, 2000)。このACAT1 vesicleの性質を明らかにするため、ヒトMφ細胞株ならびに末梢血単球由来ヒトMφを用いてさらなる解析を試みた。
 細胞分画法による解析の結果、MφのACAT1は中等度比重小胞体分画に存在し、その酵素活性はきわめて低かったが、細胞内コレステロールレベルの上昇に伴って多くのACAT1は低比重分画に移動した。共焦点レーザー顕微鏡を用いた検討の結果、ER上のACAT1はコレステロール負荷に伴ってトランスゴルジネットワーク(TGN)領域に移動することが明らかとなった。ACAT1特異抗体を用いた免疫吸着法によりACAT1陽性分画を精製し、各種オルガネラマーカーを用いてその特性を検討すると、この分画は強いACAT活性を有し、ER蛋白とTGNマーカーを含んでいた。電子顕微鏡を用いてACAT1陽性オルガネラとTGNの関連を検索すると、泡沫化Mφではゴルジ槽板に近接するTGN element (tubulovesicular body)にACAT1のシグナルが認められた。以上の結果より、ヒトMφはコレステロール負荷に伴ってERとTGNの特性を有する新しい細胞内ドメインを形成し、主にこのドメイン内においてコレステロールをエステル化していることが明らかとなった。