アクティブボード・2007年 4月
     ・・・・・2007年 4月12日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・日本分子生物学会2006フォーラム『分子生物学の未来』、2006年 12月6~8日(名古屋)

タイトル; 体幹末端部における骨盤内臓器及び骨盤部周辺組織の発生メカニズムの解析.
発表者; 原口 竜摩 氏
   (熊本大学 生命資源研究・支援センター 技術開発分野)
Abstract;
 尿道上裂、膀胱外反、総排泄腔外反といったいくつかの先天性奇形では、外生殖器、膀胱、骨盤部といった体幹部末端の複数の臓器/組織で形態異常を伴うことがこれまでに報告されている。これら一連の奇形では、体幹部末端に位置する内胚葉性上皮組織-総排泄腔 (cloaca) に異常が生じるために、上記のような形態形成異常が発生するという解剖学的所見も得られている。そこで我々は、正常発生において総排泄腔 (cloaca) が骨盤部に位置して複数の器官の形成に関与している可能性を考え、総排泄腔 (cloaca)と外生殖器、膀胱、骨盤部といった体幹部末端に位置する臓器群との発生過程における関連性を明確にすることを目的にして、主にマウス胚を用いた解析を行った。胚発生過程に重要な役割を担っていることが知られている細胞増殖因子-Shh遺伝子が、胎生初期の総排泄腔 (cloaca)において特異的に発現していることがこれまで分かっていたが、今回、Shh遺伝子欠損マウスを詳細に解析した結果、外生殖器、膀胱、骨盤部といった広範囲の部位で形態異常を示すことが明かとなった。これら形態形成異常は、上記の器官群の形成が開始される以前から既にみとめられ、さらにその発生段階ではShhは、総排泄腔 (cloaca)という極めて限局した領域でのみ発現している。このことは、体幹部末端の構造が確立される極めて初期の発生段階において、総排泄腔 (cloaca)がShh遺伝子などのシグナル分子を介し、外生殖器、膀胱、骨盤部などの臓器群の発生に関与していることを示唆してる。Shhシグナルに着目した総排泄腔 (cloaca)周辺部組織についてのcell fate analysis等の結果を含めて体幹末端部に位置する臓器群の発生機構についての考察を行いたい。