アクティブボード・2007年 3月
     ・・・・・2007年 3月 7日更新・・・・・

研究発表を行った学会;
・遺第40回 日本実験動物技術者協会総会、2006年10月27日(京都)

タイトル;ICSIを用いた凍結ラット精子からの産子の作出.
発表者; 木村 信哉 氏
   (熊本大学 生命資源研究・支援センター 資源開発分野)
Abstract;
 増加するトランスジェニックラット系統を効率的に維持するために、精子の凍結保存は有効な手段である。しかしながら、ラット凍結/融解精子は、物理的障害を受け易いため、その後の産子の作出が困難である。卵細胞質内に直接精子を注入するICSI法は、低受精能を示す精子からの産子作出に有効であるが、ラットICSIにおいてはその効率が向上していないのが現状である。そこで本研究では、ICSIを用いたラット凍結精子からの効率的な産子作出法を開発することを目的とし検討を行った。Wistar、SD及びGFPラットの精巣上体尾部精子をNakatsukasaら(2001)の方法およびTris-HCl/EDTA(Kaneko and Nakagata 2006)を用いて凍結保存し、一ヶ月以上液体窒素中で保存した。37℃で融解した精子は、同系統雌ラットの卵子内にICSIを用いて注入し胚盤胞および産子への発生について検討を行った。Wistar系統では、新鮮精子と受精した卵子の23%が胚盤胞、移植した2細胞期胚の35%が産子まで発生した。Equex stem/Egg yolkを用いた凍結精子においては、15%が胚盤胞、移植した2細胞期胚の9%が産子まで発生した。また、Tris-HCl/EDTAを用いた凍結精子においては40%が胚盤胞、移植した2細胞期胚の11%が産子まで発生した。一方、SD系統においては、新鮮精子と受精した卵子の44%が胚盤胞、移植した2細胞期胚の22%が産子まで発生した。Equex stem/Egg yolkを用いた凍結精子においては、11%が胚盤胞へ発生したが、産子を得ることはできなかった。また、Tris-HCl/EDTAを用いて凍結した精子と受精した卵子においては22%が胚盤胞へ発生し、移植した2細胞期胚のうち14%が産子まで発生した。Equex stem/Egg yolkおよびTris-HCl/EDTAを用いて凍結したGFPラット精子においては、15%および13%が産子まで発生した。本研究より、Equex stem/Egg yolk、Tris-HCl/EDTAを用いて凍結し、一定期間保存されたラット精子からICSIを介しての産子の作出が可能であることが示された。この技術は、ラットの系統維持における産子作出法として応用可能であり、今後突然変異や凍結/融解操作により低受精能を示すラット系統に有用であると考えられる。