アクティブボード・2007年 1月
     ・・・・・2007年 1月 8日更新・・・・・

研究発表を行った学会; 日本分子生物学会2006フォーラム「分子生物学の未来」
   2006年12月6日〜8日(名古屋)
タイトル; LGR4 Regulates the Postnatal Development and Integrity of Male Reproductive Tracts in Mice.
発表者; 星居 孝之 氏
   (熊本大学 発生医学研究センター 臓器形成分野)
Abstract;
 精巣上体内は精巣で産出された精子の成熟・保護・貯蔵に関わる雄性生殖器官の1つである。精巣上体は中腎管の精巣近位部から発生する、細長い管の集合体である。出生後も性成熟に至るまで、分岐することなく伸長し続けることによって形成される。精巣上体への発生には上皮-間充織相互作用が重要であるとされるが、詳細な分子メカニズムは明らかではない。
 Leucine-rich repeat domain containing G protein coupled receptor 4 (LGR4)はリガンドの不明なOrphan GPCRの1つである。他のLGRファミリーは生殖器官で重要な役割を果たすことが明らかとなっているが、LGR4の機能は不明なままである。我々は遺伝子トラップ法により得られたLgr4変異マウス (Lgr4Gt/Gt)を利用してLGR4の機能解析を試み、LGR4が精巣上体の発生に不可欠な役割を持つことを見出した。
  Lgr4 Gt/Gtは雄性不妊の表現型を示し、成体では精巣網の拡張、精巣上体管の伸長不全や拡張などが観察された。精巣網の拡張は輸出管で水分再吸収を制御するESR1とSLC9A3の減少に起因することを見出した。ESR1の発現変化は精巣上体でも観察され、生後1週で既に発現が著しく減少していた。精巣上体は出生後に著しい形態異常を示し、出生後に形成される精巣上体の再区画化がまったく見られず、管の構造異常として上皮細胞下の基底膜に波状の乱れが生じていることが明らかとなった。LGR4は間充織にて発現していることから、間充織側の影響により、基底膜の恒常性が失われたことが示唆された。
 現在は基底膜の恒常性が失われる原因の同定を試みており、その中で得られた新たな知見についても報告する。