アクティブボード・2006年 12月
     ・・・・・2006年 12月 1日更新・・・・・

研究発表を行った学会; 第36回北米神経科学会(Neuroscence2006)
   2006年10月14日〜18日 (アトランタ、USA)
タイトル; 単一細胞マイクロアレイ法による大脳皮質GABA神経前駆細胞の増殖能の研究
     Neuronal markers and cell-cycle markers are colocalized
     in the GABAergic-neuron progenitors as revealed by
     single-cell microarray analysis.
発表者; 江角 重行 氏
   (熊本大学 大学院医学薬学研究部 脳回路構造学分野)
Abstract;
 大脳皮質は記憶、認知、判断といった高次脳機能が発現される極めて重要な働きを担う部位である。その機能は80%を占める興奮性神経細胞であるグルタミン酸ニューロンと約20%の抑性神経細胞であるGABAニューロンのバランスの上に成り立っていている。マウスの大脳皮質のGABAニューロンは内側基底核原器に由来し、内側基底核原器で産生されたGABAニューロンは、接線方向に移動して大脳皮質に加わると考えられている。しかしながら、最近、我々の研究室においてGABAニューロンの産生は大脳皮質においても行われていることを見いだした。 
 まず、我々は免疫細胞化学的手法でGAD67-GFP knock-in mouse大脳新皮質脳室下帯のGFP陽性細胞を調べたところ、GABA合成酵素(GAD67)と神経細胞マーカーのMAP2、Tuj1陽性の細胞の一部で、細胞増殖マーカーであるKi-67、リン酸化ヒストンH3、BrdUが共存する事を見つけた。さらに、E18のGAD67-GFP knock-in mouse大脳新皮質脳室下帯の組織を蛋白分解酵素処理して細胞を分散し、蛍光顕微鏡下でGFP陽性細胞一個を吸引してPCRチューブに移し、逆転写をしてnested PCRを行った。GAD67, Tuj1, MAP2, β-actinは全ての細胞で検出できたが、同時に1〜2/10の確率で、細胞増殖マーカーであるKi-67陽性の細胞も見つかった。 
 さらに詳細に解析するため、単一細胞マイクロアレイ法を開発し、7個の細胞で解析を行った。この7個の細胞中、Ki-67陽性細胞は1個、別の細胞増殖マーカーであるPCNA陽性細胞は2個見つかった。DNA replicationに関わる遺伝子の発現を調べたところ、PCNA、Ki67二重陽性の細胞で多くの遺伝子が発現していたので、この細胞はDNA合成期にあったと考えられる。また、他の細胞も何らかのDNA replication関連遺伝子が発現しており、G0期にあってもまだ分裂能を秘めた細胞であった可能性が考えられる。これらの結果は GABAergic intermediate progenitorが脳室下帯に多く含まれていることを示唆している。