アクティブボード・2006年 11月
     ・・・・・2006年 11月 6日更新・・・・・

研究発表を行った学会; 20th IUBMB International Congress of Biochemistry and Molecular Biology and 11th FAOBMB Congress.
   2006年6月18日〜23日 (Kyoto)
タイトル; Zinc finger蛋白Sall4はES細胞増殖に必須である
発表者;西中村 隆一 氏
   (熊本大学 発生医学研究センター 細胞識別分野)
Abstract;
 Sallファミリー はショウジョウバエからヒトまで保存されたZincフィンガー蛋白である。我々はマウスSall1を発生期腎臓から単離し、この遺伝子が腎臓発生に必須であることを報告した。今回そのファミリーであるSall4がES細胞に必須であることを報告する。
 Sall4のヒトホモログは、眼球運動異常と四肢、肛門、心臓、腎臓の形成異常を呈するOkihiro症候群の原因遺伝子であることが知られている。Sall4のノックアウトマウスを作成したところ、予想外に子宮着床直後に致死となった。着床前の胚盤胞の培養では、ノックアウトからの内部細胞塊の増殖が低下していた。そこで内部細胞塊由来の細胞株であるES細胞でSall4を欠失させたところ、分化や形態の異常は見られなかったものの、顕著な増殖の低下が認められた。よってSall4はES細胞の増殖に必須であることが判明した。
 ヘテロマウスは出生時までにほぼ半数が死亡し、出生後の死亡率も高かった。これらには高率に肛門と心臓の異常及び外脳症が認められ、Sall4のhaploinsufficiencyによってOkihiro症候群が生じていることが示唆された。またSall1とSall4の二重ヘテロ体は生直後にすべて死亡し、上記症状の頻度が増加し、腎臓の欠損も認められた。さらにin vitroの実験からSall1とSall4が核内でヘテロクロマチンに共局在し、2量体を作ることが示された。Sall1のヒトホモログはTownes Brocks症候群を呈するが、その症状のかなりの部分が変異型Sall1によるSall4の機能阻害であることが判明した。よってSall4はSall1と協調して各種臓器の形成に関わるとともに、単独ではES細胞の増殖に必須である。そのヘテロクロマチンへの局在と分子機能の関連についても議論したい。